令和3年6月14日 第2回定例会
「海老名市の農地の現状と今後のあり方」について R3.6.14
(久保田英賢議員) 政進会の久保田英賢でございます。議長のお許しをいただきましたので、通告に従い市政に関する一般質問をさせていただきます。
1点目は「海老名市の農地の現状と今後のあり方」についてです。
海老名市でも田植えが始まり、きれいな田園風景が見られる季節がやってまいりました。SNSの投稿を見てみると、美しい田園風景に集まる野鳥や、大山を望む田園風景の写真などを多くの方が投稿されており、この景色が心の癒しになるなど、田園風景を愛するコメントが多数書かれております。少し前になりますが、市が行ったイベントの際の中学生のインタビューで、海老名の好きなところはという問いに対して、ちょっと都会でちょっと田舎なところとの答えがありました。まさにこの田園風景こそが、ちょっと田舎を指していたのではないでしょうか。
しかし、この農地を維持しているのは、土地の所有者である農家であり、放っておいて農地が維持できるわけではありません。農地を維持していただいている農家の現状は、総農家数687軒で、専業農家数は109軒とのことです。市内の農地の現状を見ると、平成29年のデータで524ヘクタールと言われており、水田が約2320反、畑が約2800反で、市域面積の約5分の1を畑や水田が占めております。圏央道の開通など交通網の発展により、流通業務の総合化及び効率化の推進に関する法律、いわゆる物効法の適用によって、市内南部地域の水田に大型物流倉庫が開発されるなど農地の減少が進んできております。全国的にも農業、農地を守るということに関し、高齢化の問題や後継者不足、もしくは担い手不足とも言われております。海老名市では、今の農地の現状をどのように考えているのか、今後、この農地をどのように維持保全していこうと考えているのかお伺いをいたします。
以上のテーマにおいて、内野市長の明快なるご答弁をお願い申し上げ、この場からの質問とさせていただきます。
市長(内野 優) 久保田英賢議員のご質問にお答えいたします。
「海老名市の農地の現状と今後のあり方」についてでございます。
農業振興を図る上で農地は必要不可欠であり、都市においては、景観形成、保水、防災機能など多面的な機能を有していることからも、農地の維持保全は重要であると考えております。しかしながら、今、海老名の農地が大変少なくなってきている状況がございます。これは、議員おっしゃるとおり、物効法によって倉庫ができたり、様々、農地であっても利用が図れるという形もあるわけであります。そういった中で、農業以外の利用が厳しく制限される制度として、農用地区域の指定がございます。私ども、こういった農用地に指定していただくことについては、支援を行っていきたいと思っております。また、収益性の高い安定した農業経営を図るためには、農業者等に対して、各種支援施策を実施するとともに、農業基盤整備による作業の省力化等を図ることで、農業者の営農意欲の向上につなげ、農地の維持保全にもつながっていくと思っているところでございます。
(久保田英賢議員) 市長、ご答弁ありがとうございました。
今、市長の答弁の中でも、農地の維持保全は重要だということのご答弁がありました。農業振興プランの中でも、農用地及び集団化された優良な農地はもとより、市街化区域における生産緑地を含めて農地の適正な管理を図っていく対策が今まで以上に必要であるということが書かれております。冒頭でもお話ししたように、今、海老名の農地は約524ヘクタールである、この保全していくべき農地をどこの農地として考えているのか、また、完全に農地を保全するならば、農用地を増やすしかないと思いますが、まず、市として農地のゾーニングというものはできているのか、そして、市全体の農用地の計画の図面などは作られているのか、また、農用地拡大についてどのように考えているかお伺いいたします。
経済環境部長(金指太一郎) 農地の保全ということです。今お話しいただきましたように、農業振興プランの中でも位置づけておりますけれども、特に農地保全を含む農地の土地利用や土地基盤整備等については、海老名市農業振興地域整備計画に基づき進めているところでございます。市の農地保全の方向性でございますが、農用地区域指定による農用地をはじめ、集約化、あるいは連担している優良な農地についても将来にわたって維持保全をしてまいりたいと考えてございます。また、現在、北部、中部、南部、それから、本郷地区に農用地区域を設定しておりますけれども、農用地区域の拡大につきましては、農用地区域の周辺農地などを新規に農用地指定し、編入、いわゆる区域拡大を行ってまいりたいと考えてございます。なお、農地指定のエリアにつきましては、特に現在のところ、ゾーニング等については行っていない状況でございます。
(久保田英賢議員) ありがとうございました。まさに農地を守るという部分に関しては、どこの農地をどういうふうに守っていくかという、市の考え方が非常に重要だと思います。都市計画法第18条の2に位置づけられる都市マスタープランというものが海老名市でも作成されてあって、令和2年の4月に改訂版を出されております。この中でも自然、都市環境の形成方針の中で、農地の保全活用に示されております。都市マスタープランとは、望ましい将来の都市像を描き、その実現のための都市づくりの方向を総合的に示すものということが書かれておりまして、私はぜひその中で、都市マスとはまた別なのですけれども、先ほど来言っている農地のゾーニングを市がしっかりとして、どこの農地をどういうふうに残していくのかというものは必要だと考えております。とはいうものの、先ほど登壇でもお話をさせてもらったように、農地というものは農家の所有物であります。農家の私権を考えたときに、農用地拡大を進めるというものに関しては非常に課題が大きいものになってくるかなと思います。農用地拡大を図るためには、今どんな取組をしようとされているのか、また、どのような課題があると思われているのか、お伺いしたいと思います。
経済環境部長(金指太一郎) 農用地拡大の取組と課題ということでございます。新たに農用地区域に指定する場合には、まず、おおむね5ヘクタール以上で、先ほどもありましたけれども、集団化、それから、連担されている農地で、機械化による営農が可能な土地などの一定の条件がございます。その上で、これらの条件を整えた農地であっても、先ほど来お話がありましたように、それぞれの地権者の意向が様々でございますので、この合意形成が最も課題と認識してございます。農用地区域の拡大の取組といたしましては、地権者の意向を踏まえ、農用地指定を進めるだけではなく、市で農用地指定エリアを設定する、今、議員からもご提案がありましたけれども、そういう形をとって、地権者の理解や合意形成を図っていくことも必要であると考えてございます。
(久保田英賢議員) まさにここを、農地保全をしていきたい、市民の皆さんからは、農地の風景、海老名市の風景が本当に素敵だということがあったにしても、やっぱりその農地は農家のものであり、その農家のご理解がなければ、なかなか保全も難しいところもあるということは理解をしております。だけど、市がしっかりと保全に関する考え方を明らかにしていかないと話は始まっていかないと思いますし、ゾーニングという言葉を使わせていただいておりますけれども、市がしっかりその計画の作成を進めていくことはぜひお願いしていきたいということを重ねてお願いします。
農地の保全に関しては、農業委員会も関わりがあると私は認識しております。高齢化などによって担い手がいなくなっている場合には、農地を耕作以外のものに活用したいという意向も出てきていると理解しておりますし、いわゆる農転というものだと思いますけれども、このような農家のそれぞれの意向に関しては農業委員会の役割が重要になってくると思います。各農家の意向をどのように把握されているのか、その取組に関してお伺いしたいと思います。
農業委員会事務局長(中山康一) 私のほうからお答えさせていただきます。
現状で担い手に不自由している方の持っている農地の把握ということでお答えさせていただきますけれども、ご質問の農地につきましては、毎年8月に、荒廃農地解消のための農地パトロールを実施しております。それから、毎年末、12月から1月にかけまして、農家基本台帳の更新を行っておるのですが、その際にアンケートをお配りして情報を集めているという形になっております。
(久保田英賢議員) そのパトロールであるとか、もしくはアンケートというお話がありました。じゃ、実際、そこでそれぞれ農家のご意向が集められた場合には、その情報は具体的にどういうふうに活用されているのかお伺いしたいと思います。
農業委員会事務局長(中山康一) パトロールで担い手がいないため、荒廃したと分かった農地、それから、アンケートで、経営を縮小したいと回答した人の農地でございますが、地区担当の委員が周辺の耕作者や、経営を拡大したいとアンケートで回答した農家との結びつきを働きかけてございます。また、パトロールやアンケートだけでなく、現在は農政課、農業委員会、JAの3者協定によります連絡ネットワークがございます。そこを経由して新規の就農者が担い手になるということもございます。
(久保田英賢議員) ありがとうございます。結びつけを農業委員会のほうで、農業委員さんたちの情報を基にされているということは、予算の委員会のときにも質疑をさせていただいて、お伺いしました。そのときに、数字をお伺いしたときに、規模を拡大したいという農地あっせんの意向調査で、28軒の人が規模を大きくしていきたいという話があってということを聞きました。逆に縮小したいという意向が66軒あるということもお伺いしました。こういうものをマッチングされていこうというところがお考えなのかと思いますけれども、その点に関して改めてお伺いしたいと思います。
農業委員会事務局長(中山康一) 現在の農業委員会は、平成28年から新制度に移行しておりまして、役割としては、農地の権利移動の許可とか、農地転用の関係について意見をつけるとか、それに加えまして、やはり今、利用調整活動と言っていますけれども、担い手と、それから、農地を農業として使いたいのだけれども、誰かに任せたいというような方への結びつけというのが使命としてクローズアップされておりますので、ご質問のような内容の活動を今やっているというようなことでございます。
(久保田英賢議員) 農地は守っていきたい、だけど、高齢化が進んでいたり、もしくは担い手が不足しているという中で、その農地をどう守っていくのかということが本当に重要になっていくと思いますけれども、そのアンケートの中で、経営志向の中で、専業でこのまま行くのだという数が16.7パーセント、農業を中心に兼業でしていくのだということのアンケートが26.4パーセントと、合わせて43.1パーセントの方が、何とか農業を守っていこうというお考えだということが示されていました。また、経営計画、規模を拡大したいというものに関しては5.7パーセント、逆に縮小したいという方々が9.9パーセントということで、やはり縮小傾向にあるのかなというところは、この調査でも、恐らく毎年同じような傾向が出ているのではないのかなと思います。では、どうやって、担い手がいないものを守っていくかということは大きな課題だと思いますし、このアンケートや、先ほどのパトロールをやっぱり有効に活用しながら、この結果の分析をしっかりとしていっていただいて、まず、先ほど来言っている、市としてはどういう農地を守るのかということのビジョンを明確にして、こういう意向の分析に図っていっていただきたいと思います。
近年では、先ほどの市長もお話がありましたけれども、物効法の影響で、海老名市の農地はかなり高値で取引をされていると聞いております。今は市外の不動産会社から農地の所有者に対して積極的に農地の転用を進める働きがされている事例があることは、私も伺っております。今後、優良な農地が広がる地域においても、徐々に転用されていってしまうのではないかという心配があるわけであります。
1つ、私の地元の上今泉の事例のお話をさせていただきますと、ここは優良な一団の農地の地域であって、原則転用ができないと言われている場所でありました。そんなところに、転用ができるような要件になるような策を取られたことによって、その優良な農地が転用されようと今しているわけであります。全ての農地を守ってほしいと言っているわけではなくて、私の中では、先ほど来の、市がしっかりと守るべき農地をゾーニングしてもらい、そして、地権者である農家の理解を求めて、その農地を守っていく必要があるのではないかということをお伝えさせていただいております。
農業委員会は、先ほどの話からも、農家の意向を一番近くで把握ができる方だと思いますし、農業委員会としても、優良な農地を意識して、農家に働きを行っていっていただける必要があると思いますけれども、農業委員会の考えを改めてお伺いします。
農業委員会事務局長(中山康一) 農地の結びつけでございますけれども、その際に考慮しなければいけないのは、果たしてその農地に担い手サイドの需要があるのか、それから、先祖伝来の土地が多数占めておりますので、所有者と担い手の間の相性という問題もございます。その部分は、地区担当の農業委員、農地利用最適化推進委員の皆さんが十分熟知しているところでございますけれども、そのために、農地の結びつけを働きかける優先順位については、各委員の方々に現状お任せしているところであり、保全を優先したい農地というテーマに関して、必ずしも連動していない部分は正直ございます。農地法では、おおむね10ヘクタール以上の規模の一団の農地の区域にある農地を良好な営農条件を備えている農地と規定してございます。この中から、市街地化の傾向が著しい区域内にある農地と、市街地化が見込まれる区域内にある農地を除いた残りについては、農地法に関します農林水産省の通知で第1種農地と呼ばれておりまして、原則転用ができない立地となってございます。先ほど来答弁しております、農業委員による結びつけにつきましては、これまでの手法のよい点は残しつつ、今後はこの第1種農地を優先に働きかけていけるように、会長及び委員の方々と今後調整を図って進めてまいりたいと考えております。
(久保田英賢議員) ありがとうございます。農業委員が一番身近なところでそういうお考えを持っていただいて、動いていただくと、守られるべき農地は守られるのかと思います。まさに今お話があった第1種農地、もしくは甲種農地、第2種農地は、原則転用が許可しないとなっております。海老名市の中で言えば、農用地以外の優良な農地の場所だと思っておりますので、その辺のことに関してはしっかり認識を持って進めていっていただきたいと思います。
このような法令上転用が不可能な立地にある農地について、実際、農業委員さんたちはどの程度そのことを承知されているのかお伺いしたいと思います。
農業委員会事務局長(中山康一) 農地転用でございますが、県知事の許可になってございます。ただ、転用の申請書は農業委員会に提出し、農業委員会が申請書に意見を付して県知事に提出する制度になってございます。県知事への意見書でございますが、農業委員会で審議した結果に基づきまして、申請地が転用可能な立地であることを書いてございますが、申請地の周辺農地が転用可能な立地かどうかにつきましては、農業委員会では議論してございません。しかし、ある農地の転用が許可されました結果、周辺農地の転用の可否にまで影響することは今後考えられますので、今後につきましては、農業委員が申請のあった農地周辺の状況を理解していく必要はございます。その方法につきましては、会長及び委員の方々と今後調整を図って進めてまいりたいと考えてございます。
(久保田英賢議員) 先ほど登壇の答弁で市長からも、農用地を増やしていくのだというお話もありました。農地を守るためにはしっかりゾーニングをして、優良な1種、甲種、2種の農地から、基本的に転用できない農用地を増やしていく、これが必要があると思います。ただ、先ほど来の話のように、農地は私の権利、農家のものである、そこをご協力していただくために、農用地を増やしていくための市としての支援策も必要かと思いますけれども、その支援策についての考えをお伺いします。
経済環境部長(金指太一郎) 農用地を増やす支援策でございます。現在、農用地保全推進事業補助金という制度がございまして、これは、新規に農用地指定をされた農地の地権者に対し、農地の畦畔補償費などに充てていただくための維持管理経費を支援するもので、100平米当たり10万円を5年間交付してございます。また、農用地区域の指定に合わせまして、将来にわたり農作業の効率化や省力化を図るべき、国、県の補助事業を活用した大規模な農業基盤整備なども行っているところでございます。
(久保田英賢議員) いろいろな策をもって何とか市も努力をされていることは理解いたします。この農用地以外の1種、甲種、もしくは2種の農地を何とか維持保全をしていこうということが重要なポイントになってくると思いますけれども、その対策に関してのお考えがあればお伺いしたいと思います。
経済環境部長(金指太一郎) 対策ということでございます。現在の農地を将来にわたって全て維持していくのは現実的には難しいと考えてございます。しかし、農用地をはじめ優良な農地については、先ほど来ご答弁させていただいておりますように、維持保全を図らなければならないと考えてございます。このことから、耕作が困難だった農業者が転用等により、安易に非農地として土地利用されることを防止するため、農業者同士での農地の貸し借りや売買の制度の周知をさらに図ってまいりたいと考えてございます。また、農業者の営農意欲を高めることが農地の維持保全につながると考えてございまして、農業委員会やJAと連携を図り、各種支援策を時代や農業者のニーズに合わせて実施してまいりたいと考えてございます。さらに、これは現在、設立準備を進めてございますけれども、農業法人においても、その担い手の確保、あるいは農地の有効利用等、農地の維持保全を取組を実施してまいりたいと考えてございます。
(久保田英賢議員) 市長、私は海老名の農地は、2000年以上前からつながってきているものだと思っております。このまちの景観、田園風景の景観というのは、まちの特徴の1つでもあると思いますし、柱にもなるものだと思っています。中心市街地と農地のバランスが、市民が望んでいるものでもありますし、これを計画的にしっかり維持しなければならない、これは市がしっかり計画を立てていかなければいけない、私はそう思いますけれども、市長の見解をお伺いします。
市長(内野 優) まず言えることは、農地に値段がつくということなのですね。そこが問題なのです。坪何万円とか、そういった値段がついてしまうからこそ、農業をやる方にとっても、負担になっているときには、売買したほうがいいとか、転用したほうがいいと出るのです。だから、海老名市が集団集約をいろいろ訴えております。あるいは農機具の貸出しも行っております。今後、農業公社をつくっていこうといった関係の中では、最低限、その条件というか、環境が必要なのは、農業の従事者の意識改革が絶対必要です。自分の農地は当分、この五、六年はやっているのだと、その後は転用したいと、そういうものについては補助は私は必要ないのではないかと思います。一時、国が、農業所得の保障を一律しました。あれほど愚策だと思ったことは私はありません。残す農地について、しっかりとした予算とか、制度をつくっていく。それから、農業の稲作ではなくて、転用を図って、園芸をやっていく、それを拡大していく、そういったときに補助を出していく。今現在やっておりますけれども、そういったことにおいて、農業を守っていきますし、イコール、農地を守っていけるのだろうと思っています。
先ほどから久保田議員がおっしゃった第1種農地の関係について、条件が整うと第3種になってしまう。これは農地法の部分の通知ですから、判断なのですね。そこの問題があると思います。そういった部分では、地方へ行くとそんなことは絶対ないと思いますけれども、こういった都市型の海老名の地域はあると思いますので、農業委員会の会長、職務代理とつい最近話した段階では、今、海老名の農地で、第1種農地と言われるところはどこにあるのだということの色分けをちゃんとしていこう、それを農業委員がある程度確認した上で、今後、いろいろな農地転用が出たときにどうしていくか、そういった課題として残していこうと考えています。しかしながら、何といっても、個人の所有の土地ですから、行政が一方的にできません。そういった中で、先ほど冒頭申し上げたように、意識を変えていただいて、その中で集団集約を図っていくという形が農地を保全する道だと私は思っています。
(久保田英賢議員) ありがとうございました。ぜひ、一歩前進というところで、まず、市として守るべき農地がどこなのだという、ゾーニングを含めて図っていっていただければと思います。
この件に関してはこれで終わります。